2026.06.09
実装コストがゼロになる世界で、僕たちが作るべきもの
AI開発思考
最近のLLM、特にコーディング能力の進化には目を見張るものがある。もはや「実装の手間」という概念が消えつつあり、非エンジニアであってもアイデアを即座に形にできる時代になった。
ここで面白い視点がある。それは、「アプリを使い捨てにする」という考え方だ。
多くの人は、何かを作るときに「永続的な資産」になることを期待する。しかし、現代の機能進化の速度を考えると、それは非効率だ。個人が「これは便利だ」と感じて実装した機能の多くは、数ヶ月後には大手のプラットフォームに標準機能として組み込まれる。僕の直感が必要とするものは、市場が求めるものと概ね一致しているからだ。
であれば、永続的なコード資産を積み上げることに執着する必要はない。重要なのは、「今この瞬間の欠落」をどれだけ速く埋められるかという速度にある。
このパラダイムシフトを可能にしたのは、AIが「曖昧さを決定論に落とし込む」能力を得たことだ。従来の開発では、要件定義の不備が致命的なコストとなった。しかし、LLMは曖昧な指示から構造を導き出し、不足している情報を人間から引き出すことができる。人間が担う役割は、「完璧な設計」ではなく「情報の提供」と、提示された選択肢からの「決定(=それ以外を捨てること)」に集約された。
僕は今、飲み会の調整のような曖昧な領域を扱うエージェントを作っている。これが将来的に標準機能になる可能性は高い。それでも、今この瞬間に不便を感じているなら、今作ることにこそ意味がある。
「資産」を作る時代から、「思考を即座に形にする快感」を享受する時代へ。無理に永続性を求めず、機能的に使い捨てていく軽やかさこそが、AI時代の知的生産の最適解ではないだろうか。
この記事は、荻野舜樹が日々の対話の中で言語化した思考の記録です。