2026.07.20
就活がうまくいかないのは、自己分析が足りないからじゃない
キャリア
就活とは、働いたことがない——つまり自分の出力を一度も観測したことがない人間に、人生最大級の選択をさせる仕組みである。記録の無い機械の不具合を直せと言うのと同じで、原理的に無理がある。だから全員が願望で答え、願望で答えるから外れる。
会社を決めるときは、たいてい事実で調べている。年収も、残業時間も、口コミも、数字や証言をひととおり集めたはずだ。ところが自分のことになると、手元の材料は急に心もとなくなる。「人と話すのは好きかもしれない」という漠然とした印象、性格診断で出た4文字、面接用に整えたガクチカ。片方は事実で埋まっているのに、もう片方は願望と作文で埋められている。

会社は事実で選んだのに、自分のことは主観のまま選んでいた——就活の取引は、たいていこの非対称のうえで結ばれている。買う相手は念入りに調べるのに、数年ぶんの時間を差し出す側の自分については、ろくに観測しないまま申告してしまう。「ミスマッチ」と呼ばれているものの正体は、多くの場合これだ。
だから、就活がうまくいかないのは自己分析が足りないからではない。分析する材料(記録)が、構造的に無かったからだ。あなたの怠慢ではない。順序が逆なだけ——考えてから働くのではなく、働いた記録からしか考えられない。
そして、働いたことがある人には、当時の何百倍の材料がもう手元にある。何が続いて、何が続かなかったか。何に慣れて、何に慣れなかったか。それはぜんぶ既に起きた事実で、読まれるのを待っている。まだ読んだことがないだけだ。